よく勘違いされるIT業界の契約と働き方を解説!請負・SES・派遣とは? 2023/2/22版
IT業界では多くのエンジニアが働いています。
勤め先によっては、自社製品を開発しているケースもあれば、お客様からの依頼によって開発をしているケースもあります。
もしも、後者の場合、所属エンジニアにとっては「お客様先で働く」といったケースも散見されます。
「お客様先で働く」ケースでは、所属企業とお客様がどんな契約形態(請負・SES・派遣等)で開発依頼の契約を締結しているかによって、エンジニアの働き方にも影響してきます。
この記事では、IT業界の構図を解説しながら、客先で働くいわゆる「客先常駐エンジニア」に焦点を当て、所属企業(雇用主)とお客様の間でどういった契約で結ばれているか、それがどのようにエンジニアの働き方に影響するかについて整理していきます。
ITエンジニアとして働きたいと考えている方は、所属企業、または勤めようと思っている企業の業態や、それによる働き方の違い等、自分に合った働き方を見つける参考にしてみてください。
IT業界の構図・企業形態
ソフトウェア開発の企業には、大きく以下の3つの業態が存在します。
①自社開発を行っている会社 |
②お客様から依頼を受けて技術提供や開発を行っている会社 |
③上記のいずれも行っている会社 |
まずは、それぞれの特徴を見ていきましょう.
①自社開発を行っている会社
「自社開発を行っている会社」とは、提供するソリューションや、プロダクト商品、サービスなどの開発を自社で行っている企業です。
ここで働くエンジニアは、主として自社のオフィスで働くことになります。
(リモートというケースもあるかもしれませんが)
また、このような企業はメーカー、ベンダー、サービス・プロバイダなどと呼称されるのが一般的です。
(一部、受託した開発案件を、自社に持ち帰って自社の環境で開発することも”自社開発”と呼ぶケースもありますので混同に注意)
②お客様から依頼を受けて技術提供や開発を行っている会社
「お客様から依頼を受けて技術提供や開発を行っている会社」とは、顧客企業(クライアント)から依頼を受けて、請負開発、SES(システムエンジニアリングサービス)、エンジニア派遣などの形態で、引き受けた内容に応じた開発をしたり、顧客が抱える開発プロジェクトに「技術提供」や「エンジニア派遣」等の形でサービスを提供し、仕事を引き受けている企業です。
故に所属しているエンジニアは、自社ではなく客先で働くことも多いです。
何故なら、セキュリティや機密情報等の都合上、どうしても客先で行う必要があるケースが多い為です。
これらの企業は、主にSIer(システムインテグレータ)や、ソフトハウス、SES企業、エンジニア派遣会社などと呼称されます。
上記の呼称の違いは、引き受けられる業務の幅や、事業規模、どういった仕事の引き受け方や開発の仕方が可能なのか等によって異なります。
③上記のいずれも行っている会社
上記の①と②両方の業務を行う企業もあります。
このような会社では、自社オフィスで働く人もいれば、客先で働く人もいるでしょう。
一般的に、部署や所属プロジェクトによって働く環境が変更されると考えて良いでしょう。
客先常駐エンジニアが多い理由
客先で働くエンジニアは、「客先常駐エンジニア」等と呼ばれます。
何故「客先常駐で働くエンジニア」が多いのでしょうか?
それは、日本国内のIT企業は、前述のうち②もしくは③の形態をとっていることが多い為です。
では何故②もしくは③の形態の会社が多いのでしょうか?
自社のソフトや製品をゼロから企画して開発し販売するのは、エンジニアだったら誰もが憧れます。
IT企業を興す方にとっても、きっとそんな想いがあるだろうと予想できます。
しかし、技術があっても売れるか否かは別物。
それだけに、IT企業を興す経営者やエンジニアの方は、「まずはお客様から受注している開発案件ありき」で起業するパターンが多いです。
先立つものとして、自身や従業員を養う給与=利益が無ければ起業も難しい為です。
自社製品を開発して販売したとして、売れるかどうか分からない。
しかしその実現をしようとすると、販売できるまでの開発期間は売上が上がりませんし、それに加えて自身やエンジニアの労働時間を確保してコストを投資する形で臨む必要があります。
こうした状況を踏まえ、経営者視点で見てみると、自社製品を開発する決断には、一定の事業体力が必要だと理解できると思います。
それ故に、相応の事業規模の会社が(またはそうした規模感になってから)自社開発を行うというステップになるパターンが多いのです。
これが、②や③の形態の会社が多い背景です。
上記のような事情もあり、IT業界の求人を見てみると、②や③の形態の会社の募集で客先常駐の求人が多いという状況になっていることが分かります。
客先常駐ではなく自社で働きたいというエンジニアは多いものの、業界の構造や商習慣の都合上、客先で働く求人やプロジェクトの方が多く、なかなかすべてのエンジニアにとって希望通りの案件に携われないのも、仕方のない状況ともいえるでしょう。
ただ一方で、求人が多く存在する点は良い部分とも言えます。
それは、IT業界未経験であってもエンジニアとして働けるチャンスがあるという事でもあります。
IT業界全体でエンジニア不足が問題となっているため、働く環境にこだわり過ぎなければエンジニアになれるチャンスかもしれません。
では、未経験からエンジニアを目指す方にとって「客先常駐」で働く事の意味をより深く理解する為、IT業界でポピュラーな「請負」「SES」「派遣」の3種類の契約について詳しくみていきましょう。
あなたが勤める会社、または勤めようと思っている会社がどういう業態なのかを知ることで、業界や働き方への理解が深まります。
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【3つの契約形態】まずは請負・SES・派遣を簡単に整理してみよう
ある企業が「システム開発をしたい」と考えていたとします。
その際、開発を発注するのにあたり、依頼主はソフトウェア開発を行っている会社に対して契約をします。
依頼したい内容や、引き受け側の企業の状況によって、締結する契約は異なります。
その際に選択する契約として、請負・SES・派遣のいずれかの契約を選び、依頼するという具合です。
こうした契約は、エンジニア自身と所属企業が結ぶ契約では無く、あくまでも所属企業(受注側)と顧客企業(依頼側)間で結ぶ契約です。この点が誤解しやすい部分なので注意しましょう。
誤解しやすい理由として、IT業界にはフリーランスや個人事業主として働くエンジニアが多い点が挙げられます。
例として、エンジニア自身が「フリーランス」の場合は、その方自身が法人扱いになる為、受注側と依頼側という関係性のもと、上記のような契約を取り交わすことがあります。
しかし、エンジニア自身が所属企業の正社員や契約社員などの雇用契約だった場合には、あくまでご自身と所属企業は雇用主と労働者の関係であり、所属企業や顧客企業との間に請負契約を結ぶことや、SES契約を結ぶという訳では無いです。
エンジニア目線で言えば、プロジェクト着任の際、所属企業(受注側)と顧客企業(依頼側)との間でこれらの契約が取り交わされる為、あたかもエンジニア自身がこうした契約を取り交わしていると誤解してしまう事が多いのかもしれませんので、解釈する上で注意が必要です。
(特に「派遣契約」の場合は、エンジニア自身は所属企業の正社員であっても、法令上の理由で、”派遣される当事者”として3者間で就労条件の共有が必要となる為、より誤解しやすい部分はあるかもしれません)
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請負契約とは?
まず1つ目に、「請負契約」についてです。
IT業界における請負契約とはどのような契約なのでしょうか。
請負契約の契約内容や責任範囲
請負契約は、成果物を納品することによって報酬を受け取る契約形態です。
IT業界ではアプリケーション開発やシステム開発において頻繁に用いられます。
請負契約で引き受けた場合、受注側の企業は、依頼内容を「納期までに、合意したコストの中で、求められた品質を担保した形で、完成させる義務」が生じます。
作業をして、成果物を完成させ、納品、その後依頼側の企業から検収を受け、その対価として報酬が支払われるという形です。
また、受注側には「瑕疵担保責任」が発生すると法的に定められており、成果物に欠陥・不具合などがあった場合は、受注側が責任を負うことになっています。
求められた要求通りの完成品を作ることが契約上の目的になりますが、完成までの細かい過程の指示が受注側に下されるわけではありません。
つまり、請け負った要件や責任を果たすことが約定なので、逆に段取りや手法などにおいては受注側にも一定の自由があり、完成までの計画策定を一任される点も請負契約のポイントです。
請負契約の案件で仕事をするメリット
では、請負契約で仕事を引き受けると、受注側企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
請負契約で受注するメリットは、以下の通りです。
●成果物の要件(品質・費用・納期)さえ守れば問題ない |
●特に指定がなければ、該当プロジェクトに携わるエンジニアは、その勤務時間や働く場所は受注側の裁量 |
●責任範囲が広い分、相応の売上に繋がる |
成果物を要件通りに納品することが契約の目的になるため、そこを守ることができれば報酬が発生します。
また、発注側からの指定がなければ、受注側に所属するエンジニアに対する勤務時間や勤務地に制限がありません。
そのため仕事を進めるペースも、納期に間に合えば受注側の裁量で決められる場合が多いです。
つまり、請負案件を受注をしているIT企業で働くエンジニアは、納期・品質・コストに対する責任は増しますが、働き方についてはある程度許容性のある環境が用意されている可能性がある ということになります。
請負契約の案件で仕事をするデメリット
請負契約で受注する場合、メリットがある一方、以下のようなデメリットがあります。
●必ず成果物の納品をしなければならない |
●納期を遵守しなければならない |
●予定された品質を担保しなければならない |
●納品後に緊急対応をしなければならないこともある |
●成果物に対する責任が重い |
上記は、この後紹介するSES契約や派遣契約だったら軽視して良いのか? と言えばそれも違います。
ただ、請負契約はその責任が”より重い”です。
成果物の納品が絶対であるため、納期を遵守する必要があります。
加えて、成果物のクオリティには受注側の責任が伴います。
納品後になにか不具合や欠陥が見つかった場合には、夜間や休日であっても緊急で対応しなくてはならないこともあります。
加えて、そうした対応があった場合も、得られる報酬に変わりはありません。
それ故に、追加の修正などの作業が発生すればするほど、受注側の利益は切迫し、場合によっては売上よりもコストの方が高くつくといったリスクも発生します。
つまり、請負案件で受注が取れる企業は、言い換えれば上記のようなリスクを踏まえて仕事を受注できる体制や技術を持っていなければならないとも言えます。
従って、そうした企業で働くエンジニアにとっても、高い技術力や責任が求められるとも言えます。
(エンジニア個人だけの責任が問われるわけでは無く、受注側企業としての責任です)
また、所属企業の緊急時には、エンジニア自身も相応の緊急対応等を求められる事もあるので、留意しておきましょう。
請負契約下で働くエンジニア視点で見た「お客様先で働く状況」は?
分かりやすい表現をするなら、お客様から発注を受けた開発チームが、お客先に自社の小さな架空のオフィスを構え、そのオフィスの中で自社メンバーが働いているといった想像をするとイメージしやすいと思います。
ですから、働く場所はお客先。
適用される処遇やルールなどは自社の雇用契約といった具合です。(一部例外等もあります)
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SES(準委任契約)とは?
続いて、SESについて解説します。
具体的にどのような内容の契約なのか、またSES契約で仕事を引き受けると、受注側企業にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
SESの契約内容や責任範囲
SESとは、その契約下にあるエンジニアが、依頼側企業に技術提供を行う契約です。
System Engineering Serviceの頭文字をとってSESと呼ばれています。
技術を提供します≒エンジニアを提供します 的な意味合いです。
SESの仕事は和訳(準委任契約)にあるとおり、契約で求められた役割を任され実行することであって、請負契約のように成果物を納品することではありません。
委任された業務の成果物への責任はないため、受注側企業としては任された業務範囲を遂行することで報酬が得られます。
一般的には、作業×時間に対して月次で報酬を決め、作業実施の対価として報酬を得ます。
故に、受注側企業は所属エンジニアに対して、依頼側企業への技術提供≒エンジニアとしての着任を命令し、該当プロジェクトで就労することを求めます。
命令されたエンジニアは、そのプロジェクトに着任し技術を発揮する形になります。
従って、そのエンジニアにとっての指揮命令は、所属する企業から出されます。
そのため、依頼側の企業が業務上の指示のほか、時間外労働や休日出勤などの指揮命令を直接出すことは法的に認められていません。(それを行った場合、法令上「派遣契約」扱いとなります)
請負・委任・委託の違いは?
ここまで「請負契約」や「委任契約」といった言葉が出てきましたが、IT業界では「業務委託」や「委託契約」といった言葉も使われます。何が違うのでしょうか?
一言でいえば、請負契約も、準委任契約も「委託」と表現して間違いはありません。
厳密に言えば「委託」とは、民法上で「請負契約」「委任/準委任契約」の2つを総称する言葉となっています。
SES契約の案件で仕事をするメリット
では、SES契約で仕事を受けると、受注側企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
考えられるメリットとしては、以下の通りです。
●品質・コスト・納期に対する責任は請負契約程重くない |
●役割や機能単位での依頼が多い為、難易度が低めの仕事がある (若手や経験の浅いエンジニアでも携われる役割がある) |
●受注側のハードルが請負よりも低い為、大手企業のプロジェクトに携われるチャンスがある |
SES契約は、開発主体となる元請け企業が、一部の役割を「外部に依頼したい」と求めるケースもあれば、そうした元請け企業から依頼を受けた二次請企業が特定の役割だけ依頼することもあります。(自社のエンジニアが手配できず、パートナー企業などに声をかける等)
それ故、ニーズも多く間口が広いため、案件次第では受注側企業が未経験者の採用枠として募集することも。
そうした案件こそ、未経験からITエンジニアを目指す方にとっては、注目すべき求人だったりします。
尚、仕事の内容は顧客企業よってさまざまなため、エンジニアに求められる技術も変わります。
従って、スキルを幅広く身につけていきたい人にとっては良い環境でしょう。
場合によっては、大手企業の大きなプロジェクトに携われることもあります。
また、成果物ではなく稼働時間に対して報酬が発生する契約のため、請負契約の案件に携わるエンジニアに比べれば、働き方の面でも少しだけ気が楽な働き方が出来る部分もあるかもしれません。
(仕事ですから、指示された作業スケジュールや品質は守るのは当たり前に求められますが)
SES契約の案件で仕事をするデメリット
一方、SES契約で仕事を受けると、受注側企業以下のようなデメリットもあります。
●プロジェクトによって環境が大きく左右される |
●下流工程の業務が多い傾向 |
●上流工程の案件は少なめ |
従って、SES契約で受注している企業に所属するエンジニアにとっても、プロジェクトごとに環境が変わる等、難しい部分があったりします。
環境の変化が苦手な人にとっては、ストレスを感じるかもしれません。
また、前述の通り、担当する業務は下流工程に限定されがちです。
どのプロジェクトを担当するのか自分で選べないこともあり得るため、スキルアップやキャリアアップに向けては物足りなさを感じるエンジニアもいるでしょう。
加えて、自社の同僚が少ない環境の場合もあり得ます。
故に、エンジニア自身にとっては「自分はどこに所属するエンジニア?」と感じることも。
そうした理由から、帰属意識を感じにくく、モチベーションを維持するのに苦労する事もあるかもしれません。
SES契約下で働くエンジニア視点で見た「お客様先で働く状況」とは?
こちらも請負契約同様、指揮命令権はあくまでも所属企業にあります。
従って、お客様から依頼を受けた契約において、そのプロジェクトに配置されたメンバーがお客様先にオフィスを間借りし、その中で働いているといった環境です。
ただし、請負契約に比べると契約が小さなプロジェクト単位だったり、業務範囲が限定的になるので、そのお客様先に着任している自社メンバー(いわば同僚)が請負に比べて少ない傾向にあると見立てられます。
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派遣契約とは?
最後に紹介するのは、派遣契約です。
SES契約とも一見似ている点、また、派遣契約にも「常用型派遣」と「登録型派遣」の2種類がある点等、やや分かりにくい一面があります。
それぞれの違いも踏まえながら、派遣契約の内容を見ていきましょう。
IT業界における派遣契約とSES契約との違い
IT業界における派遣契約は一般的に聞く「派遣」とは少しイメージが違うかもしれません。
前述の通り「お客先に常駐して働くことが多い業界」故に、いわゆる「派遣会社」と呼ばれる業態の会社では無くとも、派遣の免許を持っているIT企業は非常に多く、SES契約と似たような用途で用いられます。
ちなみに、SESとの違いは、手配されたエンジニアの指揮命令権がお客様(依頼側)にある点です。
そうした違いから、お客様がSESでは無く派遣契約で依頼するケースでは、派遣対象のエンジニアを自社メンバーと同じように、自社の指揮下において扱いたいといったニーズがあります。
前述のような目的や用途の違いで「派遣契約」を用いるため、受注側の企業視点で見ると、SESと同じようなイメージで自社のエンジニアを手配し、その依頼を引き受けます。
契約内容的にもSESと同様、依頼された成果物への責任はなく、任された業務を遂行することで報酬が発生します。
また、業務上の指揮命令は、先ほども述べた通り発注側企業からエンジニアに直接下されます。
上記を踏まえると、エンジニア視点では派遣契約の案件で働くのと、SES契約の案件で働くのでは、ほとんど違いが無いようにも見えます。
いったい何が違うのでしょう?
答えとしては「派遣」の場合、派遣先企業の従業員として働く点と言えるかもしれません。
雇用主は現所属企業ということでSESとの違いはありませんが、派遣の場合、派遣期間中は自身の名刺が派遣先に代わると考えれば分かりやすいかもしれません。
請負契約や、SES契約の案件で働く場合、働く場所が客先であったとしても、自身の名刺や立ち位置はあくまでも所属企業です。
しかし、派遣の場合は、派遣先企業の従業員としてのポジションに着任となるため、働く環境や制度、ルールなども派遣先に従う必要が出てきます。
派遣には「常用型派遣」と「登録型派遣」がある
もう一つ、「派遣」に対して先入観で誤解しやすい要素として、いわゆる「派遣会社」に「登録」した労働者が派遣先に紹介されて契約を結ぶ「登録型の人材派遣」をイメージしやすい点があります。
もともと、派遣契約には「一般派遣」と「特定派遣」の2種類が存在していました。しかし現在は、法改正により両者の区別がなくなり「労働者派遣事業」という名前で統一されています。
当時の「一般派遣」では、派遣会社に「登録」した労働者が派遣先に紹介され、その派遣期間と同期間の雇用契約を派遣会社と結びます。
派遣契約の期間が満了するタイミングで雇用期間も切れる為、その際に次の派遣先を決め、決まらなければ派遣会社との雇用契約も終了するという契約です。
一方で、IT業界ではこれとは別物の「特定派遣」が主流でした。
「特定派遣」は、エンジニアが正社員として雇用されており、案件やプロジェクトごとに派遣されるという契約です。
現在でもIT業界の「派遣」は、後者の「特定派遣」をイメージするのが一般的です。
現状では法改正とともに「特定派遣」という制度は無くなりましたが、IT業界においては、この「特定派遣」のような商習慣が今も根付いていることを頭に入れておきましょう。
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IT業界で一般的な「常用型派遣」
現在の派遣契約には、常用型派遣と登録型派遣の2種類があります。
まずは常用型派遣について解説します。
常用型派遣は、いわゆる「派遣会社」が主流としているような、登録型の有期雇用派遣とは違い、所属企業の正社員です。前述した「特定派遣」のようなイメージです。
顧客企業からの要請によりエンジニアを求められた場合に、所属企業の正社員として派遣されます。
所属する会社と発注側企業が派遣契約を交わすことから「派遣社員」という呼ばれることがあるだけで、正規雇用(正社員)です。
この点が紛らわしいので、注意が必要です。(SESとも似ているのでより紛らわしいです)
IT業界にはあまりない「登録型派遣」
一方、”派遣社員”というとぱっとイメージしやすい”登録型派遣”は、IT業界ではそれほど多くはありません。
登録型派遣の場合、エンジニアが登録している派遣会社が、ある派遣先である顧客企業と派遣契約を結んでいる期間だけ、そのエンジニアと派遣会社間で雇用契約が結ばれるパターンが一般的で、それ故に有期雇用契約です。
いわゆる「派遣会社」で働く事務スタッフなどの「派遣社員」はこちらの事を指す事が多いです。
派遣契約下のエンジニアとして仕事をするメリット
派遣契約で仕事を受けると、受注側企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
考えられるメリットとしては、以下の通りです。
●エンジニアの労働時間管理等も派遣先に委ねられる |
●指揮命令が派遣先にある為、そこで開発の成果物の責任は派遣先にある。 |
●稼働時間に応じた報酬を受け取れる |
●スキルが報酬に反映されやすい |
●働くエンジニアが、役割に専念しやすい |
派遣契約の場合、所属企業にかかる負担はSESよりも更に少なくなります。
それ故に、派遣契約の下で働くエンジニアにとっても「働きやすいさ」という点で、SESよりも優れているかもしれません。
また、派遣先の制度やルールなどが求められる一方で、派遣先企業の働き方のルールのもとで働くため、不要な残業を避けられたり、派遣先の施設や福利厚生の一部などが使えるケースもあり、非常に有益なことも多いです。
派遣契約のエンジニアとして仕事をするデメリット
一方、派遣契約で仕事を受けると、受注側企業に以下のようなデメリットが考えられます。
●プロジェクトによって環境が大きく左右される |
●下流工程の業務が多い傾向 |
●上流工程に携わるチャンスが少なめ |
●所属企業への帰属意識が低くなりがち |
上記の通り、受注側企業に多くのメリットがある一方で、優秀なエンジニアの場合は帰属意識が低くなってしまうリスクもあり得ます。下手をしたら「派遣先」に対して帰属意識を持ってしまうなんてこともあり得ます。
逆に言えば、派遣契約の下で働くエンジニア自身にとっては、一貫性のある教育や、キャリアプランが辿りにくいことも考えられます。
環境の良い職場で働けるチャンスもある一方で、自身がしっかりとキャリアプランを持っていないと、所属企業や、派遣先企業の意向に従って仕事をしていたら、いつの間にか歳をとってしまったなんて事もあり得ますので注意が必要です。
派遣契約下で働くエンジニア視点で見た「お客様先で働く状況」とは?
請負契約、SES契約と異なり、指揮命令は派遣先企業にあります。
また、自身の立ち位置も派遣先企業の従業員となります。
従って、雇用関係は自身の所属企業にありますが、派遣期間中はあくまでも派遣先企業社員といった見え方、立ち位置になる点が請負やSESの契約下で働く場合と違ってきます。
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IT業界の3つの契約形態の違い
ここまで、請負・SES・派遣の3つの契約形態について整理してきました。
違いをまとめると、以下の表のような形になります。
契約形態 | 請負契約 | SES契約 | 派遣契約 |
報酬 | 成果物の納品によって発生 | 稼働時間に対して発生する | 労働時間に対して発生する |
成果物 | 責任あり | 責任を問われない | 責任を問われない |
指揮命令 | 受注側企業 | 受注側企業 | 依頼側企業 |
エンジニアにとっての働く環境 | 常駐先企業内に自社オフィスを間借りしているような解釈 | 常駐先企業内に自社オフィスを間借りしているような解釈 | 派遣先企業の該当ポジションに着任しているという解釈 |
請負・SES・派遣。
いずれも、依頼側企業と受注側企業(自身が所属する会社)との間に結ばれる企業間契約です。
しかし、働くエンジニアにとっても、所属企業と顧客との間で結ばれる契約が、請負・SES・派遣によって自身の働き方にも変化が生じる点が理解できたのではないでしょうか。
いずれも「お客様先で働く」といった共通点がある為誤解されやすいですが、違いもあることが分かったのではないかと思います。
エンジニア自身にとっては、上記のような契約形態で結ばれた案件やプロジェクトの下で働く事になります。
それだけに、自分に合った働き方が出来そうな企業はどんな企業なのかについて理解することが重要です。
理解のポイントは、「自身が所属する企業、または転職しようと思っている企業が、どのような業態で、どういった契約で仕事を受注しているか?」がカギになると思います。
それは即ち、その後の働き方やキャリアにも繋がってくる可能性がある為です。
また、エンジニアの「派遣」は、世間の一般的な「派遣」のようなイメージとはやや異なる点にも注意が必要です。
先入観で「派遣」を誤って理解してしまうと、良い求人や良いプロジェクトを見逃してしまう恐れもあります。
そして「客先常駐=派遣」と解釈するのも誤解があることも理解できたと思います。
IT業界では、客先で働く仕事であっても「正社員/無期雇用」のパターンが多いため、「客先常駐=派遣=非正規雇用で安定性がない」と決めつけないようにしましょう。
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よく「やめとけ」と口コミが見られるSESや派遣も、未経験者にとってはチャンス
未経験でIT業界を目指す人は、客先常駐型の求人が多いことに驚かれるかもしれません。
もしかしたら、「客先常駐は避けたい」と感じることもあるでしょう。
しかし、IT業界の構造上、客先常駐での求人ボリュームが多くなることはやむを得ません。
未経験の場合は、「IT業界ならではの環境」として受け止め、まずは挑戦してみることも選択肢に入れてみてください。
客先常駐の求人があるからこそ、未経験者への門戸が開かれているとも考えることができるからです。
前向きにチャンスであると捉え、まずは実務経験を積むことを目標にしましょう。
しっかりとした経験やスキルを身に着ければ、むしろそうしたスペックがモノを言う業界でもあります。
あなたの希望する働き方を実現するために、経験やスキルを身に着ける と考えると意欲にも繋がりますね。
まとめ
IT業界の構図から請負・SES・派遣の3つの契約形態について解説しました。
特に未経験からITエンジニアを目指す方にとっては、客先常駐の求人を一概に選択肢から外すことなく、よく内容を理解してみることが重要であることが伝わったのではないでしょうか。
各契約形態の特徴や、その契約が結ばれたプロジェクトやポジションで働くメリット・デメリットを理解し、自分に合った働き方をや会社を見つけてエンジニアとしての一歩を踏み出しましょう。
AchieveCareer(アチーブキャリア)は、経験者はもちろん未経験からITエンジニアへの転職を目指す方のサポートもしています。
チャレンジを考えるならば、是非相談してみてください。
上記したような働き方の違いについても、きちんと理解した上でのサポートです。
また、AchieveTech(アチーヴテック)では、ITエンジニアを目指す未経験の若者へ向けた無料のITスクールサービス「ChickTAC」を提供しています。
まず、しっかりと学んでからチャレンジしよう という志向の方は、相談してみてはどうでしょうか?
一人で悩むより、相談しながら進めた方が、転職活動も学習も良い成果が生まれることも多いです。
選択肢の一つとして、検討してみてください。
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